JOURNAL

2023.02.02

_探訪

「柚木沙弥郎life・LIFE展」を見て

日帰り展示の旅

2021年の11月〜1月まで東京のPLAY!MUSEUMで開催されていた「柚木沙弥郎 life・LIFE」展。東京出張の予定が、コロナの感染状況が悪化し、対面の打ち合わせがキャンセルに。この展示を見に行くのも目的の半分だったので無念でならず、巡回の予定もないということで、展示のためだけに日帰りで東京に行ってきました。その1年後に京都に巡回が決まり、ちょっと悔しく感じながらも2022年12月に京都も見に行きました。(どちらも写真撮影OKでしたので掲載しております)

一つの展示のためだけに東京にまで行くのは久しぶりのことでした。柚木沙弥郎さんのことはいつ知ったのか記憶は曖昧ですが、きっかけは染色家の芹沢銈介のお弟子さんというところだった気がします。

1895年生まれの芹沢銈介の作品は今見ても色あせることなく、雑貨のデザインをしていたころから参考によく見ていました。布文字などもとても素敵です。

1922年生まれの柚木沙弥郎さんは、戦後倉敷の大原美術館に勤め、柳宗悦が提唱する民藝運動や芹沢銈介の型染に出会い、染色家へ。近年はIDEEや、京都エースホテルとの取り組みがあったり、100歳を迎えてまた展示も各地で開かれていたりと、様々なシーンでご活躍されています。民芸の世界と、現代の空気が溶け合ったような表現と、精力的に創作される姿に、いつも心ひかれます。

好きなもの

展示では、柚木さんが収集され部屋に飾っているモノたちも棚に飾られていました。そのキャプションの柚木さんの言葉が胸に沁み入りました。

「人間はいつもワクワクしていないとね。好きなもの、自分を元気付けてくれるものは、いつも身の回りに置いておきたいですね。」

好きなモノがもたらすパワーは大きい。ちゃんと自分の「好き」という気持ちを大切にして、周りを好きで埋め尽くしていきたいですね。気づけば東京でも京都でも同じキャプションの写真を撮っていました。

昨年京都・大山崎で開催されていた「みうらじゅん マイ遺品展」でも展示に圧倒されたのですが、誰かの強烈な「好き」は、とても個人的でありながら、周りの人にもとても魅力的にうつるんだなということを感じました。

右:たすき文 左:大気

展示されていた中で一番心奪われたのが1969年に作成された注染の「たすき文」と1970年代につくられた「大気」でした。今からもう50年も前の作品ですが、力強く魅力的で、ずっとこの作品を眺めていました。柚木さんからは、いつまでもずっと作品を作り続けるパワーと、その作品の持つ力に圧倒され、いつも「つくる」ということはこういうことかと投げかけられているような気がします。行くたびに自分にもパワーをわけてもらえるような気がして、2回ともほくほくした気持ちで帰りました。柚木さん、いつかお会いしてみたい方ですが、きっとご本人のもつパワーはとてつもないのだろうなぁと思います。

ちなみに柚木さんが勤められていた岡山の大原美術館、去年ようやく訪れました。原田マハさんの小説にも出てくる、歴史ある美術館ですが、柚木さんが民藝に目覚める衝撃が走った気持ちがわかる、魅力的な美術館でした。倉敷に行かれる際は、民芸館とともにぜひ時間に余裕をもって見に行っていただきたいです。(一度目の倉敷は民芸館だけで時間切れになり、去年再訪してようやく大原美術館も行けました)

色々話がそれましたが、好きに忠実に行動して見に行った展示は、自分の心にもたらしてくれるものも大きかったです。現在日本民藝館で4月2日まで、生誕100年の柚木沙弥郎展が開催されていますので、ぜひ足を運んでみてください。日本民藝館自体もとても好きな場所なので、今度東京に行く時にはまたこちらも行きたいです。