JOURNAL

2022.06.13

_経緯

命名指輪が生まれるまで

滋賀県唯一の「綴織(つづれおり)」の織匠である清原織物さん。ブランドができるまでの経緯をふりかえった記事はこちら。ここでは中でも商品ができるまでのことを、ご紹介します。

商品展開

「祝いの総合ブランド」を作ろうと決まった後、商品展開の検討や、商品企画に入りました。

既に自社ブランドで展開されていた「名刺入れ」「ふくさ」はアイテムとして継続し、デザインをリニューアルすることにしました。しかし2アイテムでは少ないため、あと2アイテムほど新商品を追加することに。どんな商品があると祝いの総合ブランドとして展開できるか。名刺入れやふくさは、就職祝いや成人祝い、入学祝いなどのシーンにマッチすると考え、他の祝いのシーンを検討していく中で、出産祝いに着目しました。

ただ、出産祝いの商品はこの世に本当に多く存在しています。sufutoだからこそできる出産祝いはないだろうか?新たな出産祝いの提案はできないか?と、リサーチを行っていきました。

命名書のゆくえ

色々とリサーチを進めていく中で「名前」が大きなヒントとなりました。
「名前は、親からもらう初めての贈り物である。」
このことに気づき、sufutoの商品展開として何か名前に関する企画ができないかと検討し、色々な候補を考えていく中で、「命名書」に辿り着きました。命名書は、命名の儀式であるお七夜にあわせて書かれる方も多いのですが、その後どうしているのだろう?飾っている?アルバムにはさんでおく?クリアファイルにしまっている…。思い出の物なのに、行き場がない。そんな現状が見えてきました。

ベビーリングとは何か

また、「ベビーリング」にもいきつきました。現在、ベビーリングの多くは誕生石で作られた赤ちゃんサイズの小さなリングで、ファーストジュエリーとして贈られ、成人後にはペンダントトップとして使われたりしています。古くヨーロッパでは、食べ物に困らないようにと銀のスプーンを贈る文化があり、それが転じてシルバーリングになり、誕生石のリングに変わっていったとのこと。スプーンからリングへ。ほぼ原型をとどめていない…と思いながらも、そもそも子を想い健やかな成長を願って贈るものならば、日本独自の考え方でベビーリングを作るのはどうだろうかと。

ベビーリングの誕生石の代わりに、”縁を結ぶ”という縁起の良さをもつ組紐に着目しました。「小田巻(おだまき)」は、絹の撚り紐を手作業で木玉へ結ぶようにしてつくられます。清原さんと組紐の工房を訪れ、職人さんの手によって一つ一つ丁寧に仕上げられる小さな玉を見て、そのぬくもりと、絹糸の輝きが、ベビーリングにふさわしいと、二人で感動しました。小田巻は、紐の切れ目が見えないことから縁が途切れずに続いていくといわれており、ベビーリングにふさわしい縁起の良さが詰まっています。様々な縁に恵まれ、その縁が続いていきますようにと願いがこもった、ベビーリングが仕上がりました。

命名指輪へ

当初、別途名前に関するものとして他の企画もしていましたが難航しており、ベビーリングもまずはリングだけで考えていました。ある日、先述の命名書への疑問から、リングと命名書を組み合わせ、それを包むカバーとして綴織を使うのはどうだろうか?思いつきます。二つ折りの形状にすることで自立もし、コンパクトに収納できます。お祝い時に共に撮影をしたり、部屋に飾った後には、大切にしまい、子が成人になった時の贈り物にもできます。清原さんとも、やりましょう!と意見も一致し、開発へと進みます。ギフトにできる価格帯にできることを共に考えながら、企画・デザインを詰めていきました。

寿布である綴織のカバーには、背守りの意匠をあしらうことにしました。

背守りとは、子の魔除けにと産着の背に縫われた刺繍のこと。大人の着物には「縫い目」があり背後から忍び寄る魔を目が睨んでくれるが、子供の産着は小さく「縫い目」がないため、背後を睨んでくれない。その代わりに、睨む目として縫い付けられたのが背守りです。背守りには、親が子を想う気持ちが縫い付けられています。その気持ちを、カバーの背にあしらいました。織で柄を表現することも新たなチャレンジで、清原さん、協力工場の皆さんが試行錯誤を重ねてくださった結果、無事に完成しました。

 

ちなみにこれは以前古道具屋さんで購入していたもの。当時はこれが何か知らずに買っていたのですが、後にこれが「背守り」の図案だったことを知りました。

こうして、様々な想いが詰まった命名指輪が誕生しました。カラー展開や、他アイテムとの兼ね合い、製造についてなど、完成に至るまでさまざまな思考錯誤をしながらの商品企画でしたが、清原さんと様々なことを考えきった先に、sufutoらしい新たな出産祝いができました。