2022.09.25
_お知らせ _経緯
「ある家の図譜」開催中
フライヤー制作を担当した展示「ある家の図譜」が始まりました。
本日、中尾さんによるガイドツアーにも参加し、完成した作品を拝見しました。会期が10月2日までと短いのですが、多くの方にご覧いただきたい展示です。
(URLは最後にあります)
滞在制作中の現場
フライヤー制作にあたり現場を見にいったのは8月の中旬。滞在制作が始まってまだ2週間ほどで、部屋の中は収集された家の断片であふれていました。
昭和に建てられた家が解体される時に、解体業者さんに混じって家の断片を収集してきたとのこと。その断片を更に綺麗に裁断して資料として整理し、品番をふり、緻密に模写をされていました。当時はまだ模写の絵も数点でしたが、それから1ヶ月の期間で4部屋分の模写が完成していました。
模写とは
模写ってどういうこと…?となると思うのですが、例えばこの壁の落書き。
箱に入った四角に切り抜かれたものが本物です。右側が模写。この壁自体のテクスチャから鉛筆の線まで。質感や経年変化を全て絵におこされているのです。これは撮影にお伺いした時に公開されていたもので、今はまた違った形で展示がしてありますので、お楽しみに。
これは8月に伺った時に描かれていた図譜の一部。襖や床板などの家の断片が緻密に模写されています。図譜とはこのように分類された絵や写真を集めたものを指します。
アーティストの中尾さんは、元々保存修復で模写を通して東洋絵画を学ばれており、仏画の絵師でもあり、現代アートの分野でも活躍されています。模写の技術は本当に緻密で、織物、金属、木、プラスチックの素材感から、そのモノの構造、そしてモノが持つ時間まで。まるで写真よりもそのモノの情報を蓄えているように感じます。絵だけでも何時間も見つめていられる魅力があります。
二つの展示空間
今回の展示は、収集してきた家の断片と、それを模写した図譜の二つで構成され、それぞれ展示空間が異なります。
普段、昭和の家は古民家などに比べ評価の対象にならないですが、今回収集されてきた昭和の家の断片たちは、裁断され、丁寧に番号がふられ、美術品のように綿布団の上に置かれ、さも貴重なものたちのように佇んでいます。
また、図譜が並ぶ空間は、文化財の修復現場がみられる棟で展示されています。文化財たちと持っている歴史は大きく異なるものの、その空間の中で図譜をみていると貴重な絵巻物をみているような、不思議な感覚になります。(こちらは残念ながら写真不可)
整然と並んだ断片をガラス越しに眺めると、さも貴重な資料のように見えます。フライヤーでは、そんなシーンをメインビジュアルとしました。また、文化修復・展示棟では、周りの様子に溶け込むように、看板も既存空間にあわせて制作しています。これらは中尾さんの意図で、展示に関わる全てのものを通して、私たちに問いかけを行っています。
文化財の修復や、アーティスト滞在と、歴史や芸術が溶け込む「なら歴史芸術文化村」という場所ならではの展示構成です。ぜひとも展示空間も楽しみながら、作品をご覧いただければと思います。